虚妄の成果主義 - 高橋伸夫 (著)

虚妄の成果主義
虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ』(ISBN:4822243729)を読了する。これまでも成果主義の問題点は指摘されているが、本書では「日本型年功制がいかに洗練されていてすばらしいものであるかということ」を力説している。この中には、うなずける点もあるが、業種、職種や企業文化の違いを抜きにして、一律に終身雇用(終身コミットメント)の利点を声高に叫ぶのはどうだろうか。状況の変化が速く勝負のサイクルが短い業界は、それに呼応した雇用体系が求めれるのではないか。また、場末の企業にはそんな余力はないだろうし、既に成果主義らしきものを導入した企業も容易も元に戻すのは無理だろう。それより、パフォーマンスの評価方法などの運用方法が問題なのだろうと感じる。とくに、次の仕事内容で報いてもらうより、刹那的であるが報酬で報いてほしい、と私などは思う。サラリーマンの最大の関心事は、「給料」なのだ。
たしかに雇用が不安定でローンも組めないようではモラルにも関わる、という議論はある。が、市場全体で労働流動性は高まり、雇用のあり方が変化していけば、これまでのようにローンに依存する生活スタイルが社会的に見直されることにも期待したい。
加えて、本書は経営学の知見が各所で披瀝されているが、どうも胡散臭い。とてもサイエンスとはいえないな、というのが感想である。これは、学生時代に得た印象と同じである。どうもあまり進歩していないようである。いいのか。