なまいき始め―私の転職・留学物語 / 岸本葉子 (著)

『なまいき始め』(ISBN:4061857827)を読了する。エッセイ。保険会社*1でのOL生活、退職、北京留学を描く「青春プレイバック」。既に在職中に、『クリスタルはきらいよ』でデビューしていたとのこと。早速、読んでみようと公立図書館の蔵書を検索したが、残念ながら収蔵されていないようだ。
本書を読んでいて「なんで会社がいやになったのだろうか」と、まず思った。それはとうとう不明であるが、なんらかの思いはこちらに伝わってくる。この心情を吐露するあたりは、これまで読んだ軽妙なエッセイではみられなかった重い筆致だ。均等法施行当時、総合職の尖兵として活躍が期待されていたのに、2年余りで退職しては、後進の妨げになったかな。これが外資系ならば、うまくやっていけたかもしれないと、いろいろ思いをめぐらせてみる。全体としては、「みずみずしい」タッチであり、当時の世相も伺えて懐かしい。「元文」(元・文学青年?)をこきおろすところが好きだ。
本書は、1990年に刊行されたものを、1994年に文庫化したものだが、文庫化にあたり長めのあとがき「ACTプラス1」が追加されていて、当時を振り返っていておもしろい。これとて、すでにいまから10年ほど前であるので、さらに過去を回顧していることになる。時の流れは速いな。カバーの筆者近影も若い。

*1:渋谷の東邦生命保険らしい。現・渋谷クロスタワー。オラクルのトレーニングで行ったことがある。