希望格差社会 / 山田昌弘 (著)

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く



読了。売れてるだけあって、読みやすい。「リスク化」「二極化」という視点で、日本の社会の問題を分析する。「努力は報われない」と感じた人々から「希望」が消滅していく。将来に希望がもてる人と、将来に絶望している人の分裂が生じるという「希望格差社会」の出現だ。私は教育現場は身近ではないが、雇用においては明らかに「格差社会」が定着しているのがわかる。
第7章「教育の不安定化―パイプラインの機能不全」のなかで、「パイプラインからの漏れ」という図がある。これは、すとんと腑に落ちた。単純化に過ぎるとは思うが、本文の解説と併せて実に分りやすい。社会のニーズに応じて、パイプの太さを調整するというのはいいアイディアかもしれない。医学部、歯学部では定員を細かく調整している。このような仕組みは、無駄な努力を避けるということができるので有効だろう。現在、IT業界でも明らかに向いていないと思う人たちが、参入しようとしてムダに資格取得に励んでいるのを見かけるが、これはもっと早い段階でお引取り願うのが、本人および社会の為だろう。
最終章で、対策について若干言及しているが、全く不十分だ。個人レベルで何をしていいのかわからない。いたずらに、不安を煽るだけだ。これを読むと、日本が衰退するのは、避けられないなと絶望的な気分になる。また、先進諸国も同様にニューエコノミーの洗礼を受けているはずだ。そこでの状況は、日本の現状と比較してどうなのだろうか。そのあたりに教訓があるのではないかという気がしてならない。