細雪(1983/東宝)

新文芸坐で、『細雪*1(市川崑 監督)を鑑賞する。「岸恵子特集」のなかの一本。
谷崎潤一郎原作による同名小説の映画化で、これが3作目のリメイクとなる。舞台は大阪の船場。既に斜陽化している呉服商の後継ぎである四姉妹をめぐる文芸作品である。四姉妹が、長女・岸恵子、次女・佐久間良子、三女・吉永小百合、そして末娘・古手川裕子で、伊丹十三石坂浩二がそれぞれ長女、次女の婿養子という配役である。呉服メーカーの三松のバックアップによる豪華な衣装は必見だ。その見事な和服で四姉妹が京都の桜の下を散策するシーンは文句なく美しい。市川はこのシーンだけを撮りたかったのではと思うほどだ。
原作では末娘が中心だが、映画では三女の縁談を軸にストーリが展開していく。小百合ちゃんファンは必見だろう。とくに鮎研究家(小坂一也)との見合いのエピソードは楽しい。結局、三女は華族出身の江本孟紀*2と結婚することになるのだが、彼だけセリフもなく完全に浮いていたと感じたのは気のせいだろうか。また、密かに三女に想いをよせる義理の兄を石坂浩二が演じているが、現在放映中のテレビドラマ『白い巨塔*3と同じ芸風かなと感じたが、彼の演技も見所のひとつだ。
ラストでは、長女一家の東京転勤で幕となる。戦時色が次第に濃くなっていく時代背景にもかかわらず、映画ではそれが前面には出ていないところもよかったかもしれない。戦前の富裕層の残照を感じさせる秀作である。

*1:「ささめゆき」と読む

*2:プロ野球を10倍楽しく見る方法」で有名な元・野球選手、元・国会議員

*3:財前と対立する東教授を演じている