教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)
教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化』(竹内 洋 著, ISBN:4121017048)を読了する。
書経験を人格形成の糧とすべきという「教養主義」。著者はこのような「教養主義」が何故社会的に盛り上がり、そして没落していったかを検証する。「教養主義」を戦前、戦後と行き来しながら、その歴史的文脈を掘り下げている。とくに、岩波書店に由来する「岩波アカデミズム」の周辺を詳細に述べているのは興味深い。著者は大学のレジャーランド化の背景には、大卒が「ただのサラリーマン」として処遇されるようになったために、そのサラリーマンの文化に適応するため、大学生が教養主義を無視しだしたことにあるという。が、そのサラリーマン文化も昨今のリストラや能力主義にみられる新しい雇用環境の変化により崩壊に瀕しているのかもしれない。
私の学生時代には、既に「教養主義」は完全に衰退していたが、教員のなかにその残照を感じることはあった。本書では「教養主義」の衰退するまでを検証しているが、「教養主義に代わるものが、今の時代どうあるべきなのか」には言及されないのは残念だ。それこそ、まさに今日求められているものだろう。