偽大学生(1960/大映)

ユーロスペースで『偽大学生』(増村保造監督)を鑑賞する。「特集上映 増村保造若尾文子」の一本。大江健三郎『偽証の時』が原作で、60年安保当時の学生運動を背景としている。
四浪の末、また受験に失敗した主人公・ジェリー藤尾は、田舎の母のために試験に受かったことにし、偽大学生として東都大学に通い始める。偶然に学生運動に巻き込まれデモで暴れて官憲に逮捕される。取り調べで偽学生であることが発覚し、学生たちにスパイ扱いされ学生寮に監禁される。主人公は、ついには現実と狂気との区別がつかなくなり精神病院に収容される。
若尾文子は男ばかりの学生たちのなかで、凛とした存在感がある。ラストの学生集会で真実を語る場面が印象的だ。出演者では、若尾の父が中村伸郎で、戦時中軍部に大学を追われた元・教授というのが注目である。まったく教授が似あう役者だ。また、若尾は『処刑の部屋』(1956)でも女子大生を演じおり、そこでも中村が教授として出演している。