月はどっちに出ている(1993/シネカノン)

銀座シネパトスで『月はどっちに出ている』(崔洋一監督)を鑑賞する。「映画監督 崔洋一 特集」のなかの一本。導入部の在日同士の披露宴のシーンから、終始差別用語が飛びかう。在日問題をテーマに据えた生半可な社会派映画かと思ったがそうわけでもない。岸田五郎をはじめとする登場人物が皆それぞれのキャラクターをもった小市民であり、描いているのは小さなタクシー会社を舞台として日常である。フィリピン人ホステスのルビー・モレノのあやしい関西弁が愉快だ。「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」。
元ボクサー*1の同僚が「おらぁ、チョーセン人は嫌いだけど、忠さんは大好きだ」というセリフには困惑するが、根深い差別問題に静かに光をあてている。ちなみに、新人のタクシー運転手が道に迷ったときに、月に向かって走って返ってこい、というのがタイトルの由来である。

*1:パンチドランカーなのかな