雁の寺(1962/大映)

シネマアートン下北沢で、『雁の寺』を鑑賞する。特集上映『監督 川島雄三』のなかの一本。水上勉原作の直木賞受賞作品の映画化で、小説では、これに続いて「雁の村」「雁の森」「雁の死」の四部作となっているらしい。作品に流れるのは暗い情念であり、実は怖いサスペンスなのだが、少し下品でユーモアがあるのは川島監督らしい。また、オープニング・タイトルとエンディングだけがカラーという珍しい構成だ。とくにエンディングで、観光地となっている現在の「雁の寺」に唐突に場面が移り、復元された「親子雁」の襖絵が写し出されて終幕となるのはうまい。住職の三島雅夫の代表作といっていいほどのはまり役だ。若尾文子も色気がほどよくて良い。
ちなみに、「雁の寺」の舞台となったのは、洛北の相国寺瑞春院である。一度訪れてみたいものだ。