美しい夏キリシマ(2002/キリシマ1945)

新文芸坐の「終戦の日特別企画 映画を通して戦争を語り継ぐ」で、『美しい夏キリシマ』(監督:黒木和雄)を鑑賞する。
沖縄陥落後の1945年、終戦間際の宮崎県霧島。15歳の主人公の少年は、動員先の工場の空襲で親友を見殺ししたという罪悪感から、鬱々と日々を暮らしていた。村の共同体がいまだ残るなか、彼を取り巻く人々の日常を描く。
終戦前の日本というと、空襲警報が鳴り響き、物資不足の困窮してという思っていたが、ここ霧島ではそういったことはなく、生活は豊かで安閑としている。地方によっては、そのような状況であったのだろうか。興味深い。特筆したいのは、田村正毅の撮影による映像の鮮やかなことだ。夏の空が青い。それだけで映画館で見る価値のある。戦闘シーンのない戦争映画だ。
上映後のロビーで、黒木和雄監督の著作『私の戦争』(ISBN:4005004792)を見つける。みずからの痛切な戦争体験を綴っており、本作との繋がりも窺える。いずれ読んでみたい。