斬る (1962/大映)

斬る [DVD]
テアトル新宿で『斬る』(監督:三隅研次)を鑑賞する。市川雷蔵映画祭「艶麗」のなかの一本。昨年末のシネスイッチ銀座での企画の焼き直しだろうか。雷蔵の客層からいえば、新宿よりは銀座向きの企画だと思うが。とにかく、前回見逃した作品を観る機会があるのは嬉しい。
「剣・三部作」の第一作。関わった三人の女の死と、出生の秘密が陰を落とす天才剣士の数奇なる運命を描く。あいかわらず映像は美しい。結局、最後にボディーガードの任を果たせずに自害するのは、非情というより冴えない。そもそも、「三弦の構え」も怪しいので、剣客ものとしては、ちょっと物足りない。冒頭、藤村志保の立ち回りに重ねてタイトルバックが流すのは斬新。出演者などの文字を読んでいる暇がないのは難点だが。その藤村も本編開始早々に刑死してしまうのも意表を突く。
三部作の一つ『剣鬼』(1965) を思い出してみると、出生の不幸が共通している。これが、三部作の鍵であろうか。未見の『剣』(1964)も、是非この機会に観たいものだ。